わたしが中学生の頃クラスでボカロ曲が爆発的に流行った。爆発と言っても、とてつもなく小規模な範囲での爆発であって、クラスのオタクグループや陰気なグループで大ブームとなっていたのだ。


世間的にも2010年前後あたりにボカロブームが来ていた記憶がある。千本桜が普通に地上波で流れたり、初音ミクなどのキャラクターがオタク文化的な扱いではなく、ひとりのシンガーとしてテレビで紹介されていたり。もうちょっと10年くらい昔だとオタク文化はテレビでひどい言われようだった気がする。それこそ犯罪者の家に美少女アニメのグッズがあったら大々的に取り上げられてたし、オタクは陰湿で怪しい奴だ!という演出じみた大げさなくらいにそんな感じの扱われ方をしていたのに。時代が変わったのかオタク文化がポピュラーなものになってきたのか、ネットの流行りがNHKで真面目に解説されたり、もうちょっと時代が進んで現代だとTikTokでボカロ曲やアニソンとかあんまり関係なく可愛いキャッチーな曲なら若い子たちは振りをつけて好きなように踊ったりしているみたい。すごいね。


わたしはオタクであるという自負があるのだが、わたしが言うオタクとは2000年代初期の2ちゃんねるがWelcome to Undergrond…PS3を買うのに物売るってレベルじゃねぇぞ!な秋葉原の歩行者天国にコスプレをしたみなさんが集まりハレハレユカイを踊るようなそんな時代のオタクが好きで、オタク文化が好きで、精神性が好きで、思想が好きで、そんないろんなモノからいろんなコトを吸収した結果のオタクであるわたしという自負が生まれたのだと思う。


これはつまりどういうことなのかと言うと、自分にしか分からない世界があって好きなものがあって、それが4畳半くらいにいっぱいいっぱいに詰まっていてその空間が大事で大切で、でも一歩その外に出ると自分にこんな大事で大切な空間があることを隠さないといけなかったりこういう空間を持っていること自体が恥ずかしかったり、それこそ現実世界では人とわかり合うことを諦め小さな画面の前に座り顔も見たことのない人間同士でのやりとりに満足できるような、そんなオタク像がわたしにはあり、わたしはそういう姿に近いと思う。


時代が進むにつれオタク像もどんどん進化して、今のオタクは本当にすごいと思う。狭いけど好きが詰まった空間から気軽に飛び出し、人の好きなものもすぐ空間に取り入れるし、どんどん空間も広くなってきて1LDKくらいあるし、窓からいろんな人が見えてもウェルカムな感じというか、隠喩に隠喩が重なってしまったけどボーダーレスな感じがすごくする。各界隈ごとの壁があまりない感じ、スーパーマリオ3D WORLDのエリア移動するときみたいな透明でデカいパイプがそこらじゅうに張り巡らされていて、今のオタクはそのパイプに飛び込みいろんなものを好きになっているんだろうなあ、自由で素敵だなあと思う。


そんな現代のオタク像からかけ離れているため、わたしは自分のことを古(いにしえ)のオタクと呼ぶことがある。要は昔気質なのだ。


そんな古のオタクが現役オタク真っ只中だった中学時代にボカロブームが巻き起こった。そもそもニコニコ動画にハマっていたのもこの時期だったし、本当にこの時期はいろんな曲をよく聴いた。ボカロ曲はテレビで流れるメジャーな曲とは明らかに違って、圧倒的に未熟な者やひねくれ者のそばにいた。感じがした。いくらメッセージ性のある応援ソングでもメジャーミュージシャンが歌うよりも詳細があまりわからないボカロPが作ってボーカロイドの初音ミクが歌う曲のほうが本当だと思った。

中学生の頃からずっと好きなボカロPがいる。ピノキオピーさんである。

ボカロ曲はその製作者によって初音ミクの歌声の感じも調整できる。人間の歌声に限りなく近づけたり、むしろ機械っぽくしてみたり、つくる人によって初音ミクの歌い方がぜんぜん違うのもボカロ曲の面白いところでもあった。そしてピノキオピーの初音ミクは、血の通っていないぬくもりのある歌声だった。ピノキオピーの曲にはいつも怖さにも似た切なさ悲しさがあった。それと同時にそんな悲しい状態を茶化す様なおちゃらけも必ずあった。人間や社会の器用に完璧には絶対になれない姿をボーカロイドの初音ミクが遠くのほうから応援や蔑み憐れみを込めて歌ってくれていた。それがとても心地よくて未だにスマホのプレイリストに入っている。


あと、とても個人的な良い思い出として、ピノキオピーは新曲をあげるとニコ生をしつつその曲の宣伝をしてくれるのだが(だったはず)、ピノキオピーのMVによく出てくるアイマイナちゃんという二頭身で目が真っ赤なキャラクターのぬいぐるみが画角のちょうど視聴者と目が合う位置にいたので、「アイマイナちゃんと目が合う」とコメントするとピノキオピーがそれに気づいてくれたのか、アイマイナちゃんを握りしめて左右にブンブン振ってくれたのだ。アイマイナちゃんぬいぐるみも、ただ面白くも変哲もないコメントを拾ってそんな行動をしてくれたピノキオピーももっと好きになった日だった。


年々マシになってきたというかあきらめが付いてきたというかなんというか、中学生くらいの頃からずっと普通の人が普通にできることができん!というのが続いていて、今でもときどきそうなる。今だからこそそういう人って本当にいっぱいいるしみんなどっかしら誤魔化しながらうまいことやってるんだなーというのが分かってきたものの、でもこんなのわたしだけだったらどうしようと不安になる日がある。中学生の頃布団をかぶって泣いたような気持ちが20歳を超えてももうちょっと過ぎても同じでずっとあるなんて知らなかった。思春期特有のアレだと思っていたのに。今も思春期という説もあるけどそれはキショすぎるので一旦土に埋めておいて、そんな気持ちになった日は聴くのだ。ボカロ曲を、ピノキオピーを。

中学生の頃世間がわからんと意味のない夜ふかしをしていた自分にそうしてくれたように、寂しく楽しく切ない曲たちは励ますでもなくそばにいてくれる。

大好きな曲の一つに『アルティメットセンパイ』がある。そんな曲のさらに大好きな歌詞がある。



反省してるし めっちゃ落ち込んでる 

この世の終わりみたいな顔してる 

反省してるし めっちゃ落ち込んでる 

ふりをしている ふりをしている 

頭の中では お花が咲いてる



本当に大好きな言葉で、ここだけ切り抜いてLINEのホーム画面の音楽に設定している。死ぬほど反省している様に見せかけて頭の中にお花を咲かす人間になりたい。真面目は良いことだけど突き詰めすぎるとうまくいかないようになってる。最近になって分かったことの一つ。踊り狂うアイマイナちゃんのようにたまには好きな歌を歌いムチャクチャなダンスをするくらいでちょうど良いのかもしれん。知らんけど。


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明日の撮影に備えてサウナで整おうとしたけど、途中から入ってきたたくさんのピチピチギャルたちに恐れてすぐ出ちゃったから整いは失敗、でもその前に入ってたでかいお風呂でのあったまりが残っていたので世知辛くもほこほことした謎の帰り道でした。でっかいお風呂屋さん気持ちいいし好きだけど急に居心地悪くなるなら、富豪価格でも個室サウナでもいいかなとなったね〜時間帯もあるだろうしまだわたしは都内の銭湯とサウナを諦めないぞ!がんばるぞ!


というか明日の撮影を考えるならはよ寝ろ!入眠!!!スヤスヤ!!!!!!!